3歳のマルチーズ「モコちゃん」と飼い主の山崎智絵さんが初めて出会ったのは、昨年3月に開催された「ワンボナ」でした。
保護犬と暮らすのは初めてだった山崎さん。散歩への不安や体のケア、ケージでのパニックや遠吠えなど戸惑うことも少なくなかったといいます。
それでも一家は、モコちゃんが安心できる環境を優先しながら、少しずつ生活を整えてきました。迎えてからの変化と、日々の暮らしの工夫を伺いました。

山崎モコちゃん
犬種:マルチーズ
年齢:3歳5ヶ月(インタビュー時点)
出会い:2025年3月「ワンボナ」
お迎え:NPO法人 Anisma みさきアニマルすまいる
モコちゃんをお迎えした経緯を聞かせてください。
モコは NPO法人 Anisma みさきアニマルすまいる さんからお迎えしました。
もともと保護犬を迎えたいっていう気持ちがずっとあって、いろんな団体さんのインスタを見ていたんです。
みさきアニマルさんの投稿を見た時に、「あ、この子に会ってみたいな」ってすごく気になった子がいて、それがモコでした。
ただ、団体さんのところに直接会いに行くのはハードルが高くて。そんな時に、ちょうどワンボナっていう譲渡会があることを知って、早速行ってみたんです。
ワンボナですぐモコちゃんに会えたんですか?
最初から「モコに会いたい」って思って行ったんですけど、会場に着いたらちょうど「今、保護団体紹介でモコちゃんはステージに行ってます」って言われて。あわててステージを見に行ってみたら、保護団体の方に抱っこされていました。

モコにとってその時が初めての譲渡会だったそうで、まるで借りてきた猫みたいにきょとんとしてて。その姿を見て「ああ、なんて可愛いんだろう」って。
ステージを降りてきたモコを抱っこさせてもらったんですけど、その瞬間に「この子だ」って確信しました。すごく惹かれたんですよね。
その日のうちに保護団体の方に申請しました。家庭環境とかいろいろ見てもらったうえで、3月20日からトライアル開始になりました。期間は2週間だったかな。その時には、気持ちは決まっていました。
ちなみにモコは繁殖場にいた子みたいで、病院で「出産経験があるかも」って言われたこともありました。狭いケージの中で過ごす時間が長かったのかな、という話も聞いていて。だから、最初から「慣れるまで時間はかかるかもしれないな」っていう気持ちはありました。
おうちに来た当初のモコちゃんの様子はどうでしたか?
最初は、くるくる回ることがすごく多かったです。どうしたらいいかわからない時に、くるくる回っちゃう。今はご飯待ちの時とかにちょっと回るくらいで、あの頃みたいなのはほとんどなくなりました。
それから、ケージに入れるとひどいパニックになっちゃって驚きました。
「犬ってケージに慣れたら安心する」って聞くじゃないですか。でも、モコにとってケージは安心できる場所じゃなくて、閉じ込められていた恐怖と結びついてたのかもしれない。
だから、うちでは無理にケージに入れるのはやめました。まずは安心の方が大事かなって。

あと、遠吠えもありました。ひとりにすると遠吠えしてて、「おーい」って仲間を呼んでるみたいな感じというか。保護された時の場所には他にも犬がいたと思うから、そこで覚えたのかもしれないですね。
それと、散歩。モコは散歩をしたことがなかったんだと思うんですけど、最初は外に出るのが怖くて、全然歩かない。
だから、いきなり「散歩行こう」じゃなくて、庭で一緒に日向ぼっこしたり、息子の登校の時に途中まで抱っこして一緒に行ってみたり、外の空気に慣れるところから始めました。パピーのお散歩デビューみたいに、少しずつって感じですね。
細かい困りごとでいうと、砂を食べちゃうとか、髪の毛を食べちゃうとかもありました。
それまでの生活はケージの中だけで過ごしていたから、うちに来て初めて経験することばっかりだったのかもしれません。生活の中で危ないことは止めつつ、知り合いにしつけの工夫を教えてもらったりして、今はかなり落ち着いてきました。
今思うと、我が家に来た時のモコはまるでおばあちゃんみたいでした。
まだ2歳台なのに、感情があんまり出ないというか、喜び方がわからない感じで。たぶん小さい頃からずっとそういう環境で、表現の仕方を知らなかったんだと思います。
最近になって、しっぽを振るようになったり、おねだりしたり、少しずつ感情を出してくれるようになってきて。「あ、やっと3歳らしくなってきたな」って感じます。
モコちゃんが来てから、どんな変化がありましたか?
モコが来て一番変わったのは、家がにぎやかになったこと。
うちは猫もいるんですけど、猫がいるだけでも家の空気って変わるじゃないですか。それがモコが来て、さらに賑やかになりました。朝起きて「モコかわいい」って思うのが、普通に毎日あります(笑)。
ただ、生活は正直、大変にはなりました。仕事もいくつかしてるので、散歩も「1日2回行かなきゃ」って思うと、もうそれだけでいっぱいいっぱいになっちゃう時期があって。
今はようやく生活のバランスがとれてきて、やっと落ち着いてきた感じです。
息子(健君・小3)もモコにメロメロで、モコが寝る場所は息子の足元なんです。子どもと犬が一緒に育つのっていいなって前から思ってたので、今それが見られるのは嬉しいですね。
旅行先とかドッグランで、モコが楽しそうにしてる姿を見てるだけでも嬉しい。自分が遊ぶっていうより、「モコが楽しんでる姿を見るのが嬉しい」って感覚です。

苦手だった犬同士の交流も少しずつ変わってきていて、この前旅行に行った時、最初は他の犬にロックオンされて必死で逃げてたのに、途中でスイッチ入ったみたいに自分から行くようになって。
「まだまだ変化が出てくるんだな」って思いました。3歳って、そういう時期なのかもしれないですね。
モコが来てくれたことがきっかけで、昨年11月に わんこ室内OKのレンタルスペース「with you」を辻堂にオープンしました。
犬だけじゃなくて、飼い主さんも犬を飼っていない人も、子どもたちもお年寄りも、みんなが尊重しあって集える場所を作りたかったんです。今後はその場所で譲渡会をやったり、犬のオフ会や飼い主同士の集まりやワークショップなんかもやっていきたいと思っています。
これから保護犬を迎えようと思っている方に伝えたいことはありますか?

迎えて3ヶ月くらい経った頃、モコが私に「心の壁」を作ってるように感じた時期がありました。「まだ心開いてないな」って。自分たちが試されているような感じもして、どう接したらいいかわからないんですよね。
でも、それは表現の仕方を知らないだけだったんじゃないかって、今は思うんです。絶対、幸せだと思うんですよ。今まではそういう気持ちを人に伝えることができなかっただけで、少しずつ出せるようになっていくんじゃないかなって。
それから、「この子、うちに来て幸せかな」って考えちゃう方って結構いると思うんですけど、そう思う時点でその子に対する愛がすごくあると思うんですよね。愛情があるからこそ、考えちゃう。
犬って人みたいに「幸せかどうか」を考えるというより、その瞬間に「楽しい」「安心」って感じられたら、それで十分なのかなって。
これから保護犬を迎える方に伝えたいのは、そんなに特別に構えすぎなくていいってことです。
「保護犬だから大変」っていうより、結局はその子の個性で、ペットショップの子だから楽ってわけでもないし。大人の犬になってから迎えたとしても、こちらに対しての愛は変わらないと思う。
もちろんその子によってケアが必要なことはあるけど、そこはフラットに考えていいのかなって思います。
大切なのは、すごくシンプルですけど「大事にしてね」っていうことです。
完璧にやろうとしすぎなくても、愛を持って接してれば、絶対伝わると思います。
レンタルスペース&フード with you
藤沢市辻堂東海岸1-3-15



