
青木正人さん寿江さんご夫妻がリルちゃんを迎えたのは2016年8月。当時は推定5~6歳だったので、今では15~6歳になりました。
リルちゃんは放浪していたところを保護され、保健所を経てシュナウザー専門の保護団体「SDRN」さんにつながった子です。
お迎え当初は、お散歩で興奮して吠え続けたり、お留守番が苦手だったり。正直、楽なスタートではありませんでしたが、リルちゃんの「苦手」を避ける工夫を重ねるうちに、少しずつ暮らしは落ち着いていきました。今は「リルちゃん」と呼ばれるのが嬉しくて、お出かけが大好きなシニア犬です。

青木リルちゃん
犬種:ミニチュア・シュナウザー
年齢:推定15歳〜16歳
出会い:2016年8月27日
お迎え:SDRN(Schnauzer・Dog Rescue Network)
リルちゃんをお迎えした経緯を聞かせてください。
リルは、シュナウザー専門の保護団体「SDRN(Schnauzer・Dog Rescue Network)」さんからお迎えしました。大阪の団体さんです。
実はリルの前に、シュナウザーのベンという子を飼っていたんですが、病気で急に亡くなってしまったんです。まだ若くて元気だったのに、ある年の2月に病気が分かって、そこから一気に…。大学病院にも通って、できることは全部やりました。でも、家族としては「これ以上はつらいだけかもしれない」って思うところまできてしまって。結局、病気が分かってからわずか3ヶ月後の5月には旅立ってしまいました。今思い出しても苦しいですね。
それでも犬のいる暮らしが当たり前だったので、落ち着いた頃に「もう一度シュナウザーを迎えたい」と思いました。
探していくうちに、シュナウザーの保護犬って思っていた以上に多いことを知りました。リルはSDRNさんのホームページで見て気になって、一度大阪まで会いに行きました。あの時、リルは5~6歳くらいだったと思います。
距離があるのでトライアルなしで、団体さんが車で連れてきてくださって、そのまま日帰りで帰られたんです。すごいですよね。
リルは迷子の放浪犬で、保健所に入っていた子だと聞いています。
おうちに来た当初のリルちゃんの様子はどうでしたか?

リルは放浪していたので、保護された時は皮膚や被毛の状態もボロボロでした。その姿を見て、ギリギリの過酷な状況の中で必死に生きてきたんだと思いました。
日々の生活で一番大変だったのは、やっぱりお散歩です。
来た当初は、とにかく吠える。玄関を出た瞬間から興奮して、ずーっと吠えたまま。だいたい1キロくらい歩くと、やっと落ち着く…みたいな感じでした。
うちはマンションなので、エレベーターは抱っこで降りて、外に出てしばらく歩いてから地面に下ろすようにしていました。下ろすと「やるぞ」ってスイッチが入っちゃうので…。
体力もすごかったです。
もともとお散歩が十分できていなかった子なのか、エネルギーが余っていて、発散しないと余計に興奮しちゃう。だから最初の頃は、わたしも一緒に全力で走って発散させたり、10キロ一緒に歩いたり。1日2回の散歩で、1時間じゃ足りない日もありました。走っていると興奮して、足を噛まれそうになることもあって「犬ぞりみたい」って言ってました(笑)。
でも、リルにとっては、走って全部発散するのが生まれて初めての経験だったのかもしれない。あの発散があったから落ち着けた部分も大きいと思います。
それと、犬が苦手だったので、無理に他の犬に会わせるより「会わないコース」を選ぶようにしました。トレーナーさんにも「犬が怖いなら、会わなくていい。避けられるなら避けよう」って言われて。そこは割り切りました。
もうひとつは、お留守番。
最初は出かけようとすると後追いして、不安そうで。私が仕事に行く時も、マンションの下まで降りても泣き声が聞こえることがあって、「これは置いていかれると思ってるんだな」って。
トレーナーさんに家に来てもらって、家の環境を見てもらいながら、ハウスの練習や、出入りの仕方を少しずつ整えていきました。落ち着くまで、体感では半年くらいかかったと思います。
あと、リルが来てから、心がけていることがあるんです。リルと主人が散歩から帰ってきた時、私が足を拭いてあげるんですが、その時は必ず笑顔でリルを迎えるようにしています。リルが我が家に来て嬉しいと思ってくれたらという私の願いです。
リルちゃんが来てから、どんな変化がありましたか?

一番大きいのは、私たちの世界が広がったことかもしれません。
ベンと暮らしていた時は、家で一緒に過ごすのが中心で、「犬のためにどこかへ連れて行く」っていう発想があまりなかったんです。
でもリルが来て、トレーナーさんのところで他の犬と過ごす経験をしたり、自然の中を歩くイベントに行ったり、だんだん「こういう楽しみ方もあるんだ」って知っていきました。
パックウォークのようにみんなで歩くイベントに参加するようになって、散歩も少しずつ変わりました。最初は待ち合わせ場所でみんなギャンギャン吠えて大騒ぎなのに、歩き始めると自然に静かになる。あれは不思議ですよね。でも「群れの中だと安心する」っていうのは、確かにあるのかもしれません。リルも、前は吠え始めるとずっと引きずるくらい執着していたのが、だんだん引きずらなくなってきて。「参加してよかったな」って思いました。
あと、アニマルコミュニケーションの方にリルの気持ちを聞いたことがあって。「リルちゃんって呼ばれるのが嬉しい」「一緒にお出かけするのが好き」って言われたんです。それを聞いて、私としてはすごく安心しました。
今はシニアになって耳も遠くなって、体も昔みたいには動かなくなりました。最近は介護のことも増えてきて、大変なこともあります。でも、できる限り長生きして、いろんなところに連れて行ってあげたい。リルが喜ぶ顔を見たいなって思います。
これから保護犬を迎えようと思っている方に伝えたいことはありますか?

放浪したり、飼育放棄されたりしてきた犬って、やっぱりすごく不安なんだと思います。
でも、家に慣れてきて「ここが自分の場所だ」って分かった時、顔がふっと緩む瞬間があるんですよね。それを見ると、涙が出てきます。ああ、よかったなって。
保護犬を迎えるって、もちろん簡単なことばかりじゃないです。吠えたり、不安になったり、こちらがしんどくなる時もある。でも、まわりの助けを借りながらやっていけば、少しずつ変わっていくことも多いと思います。トレーナーさんだったり、同じ団体から迎えた飼い主さん同士のつながりだったり。話せる場所があるだけで、全然違います。
あと、私が好きな言葉があって。
「もしあなたの膝が空いているなら、いつでも家族を迎えて」っていう言葉なんです。
一頭の家族が決まれば、また次の子が保護団体に迎えられる。そうやって、少しずつでも“迎えられる場所”が増えていったらいいなと思っています。



