一匹迎えれば、もう一匹が助かる──2頭の保護犬と暮らす、ある家族の選択

鎌倉で暮らす田中俊充さん洋美さんご夫妻の家には、二頭の保護犬がいます。
うらくんと、りんちゃん。

どちらも茨城県出身のミックス犬です。

実は、二頭目を迎えることには、少し迷いがありました。
一頭でも犬との暮らしは大変です。
それでも、もし二頭でも暮らせるなら…。

犬を一頭迎えれば、そのぶん保護団体の「枠」が一つ空く。
それは、また別の犬が救われる可能性につながります。

そんな思いから、二人と二頭の生活が始まりました。

田中りんちゃん(写真右)
犬種:ミックス
年齢:推定3歳
お迎え:paws adoption かながわ

田中うら君(写真左)
犬種:ミックス
年齢:推定2歳
お迎え:paws adoption かながわ

最初に田中家の家族になったのは、りんちゃんでした。

りんちゃんは、茨城の野犬の群れの中で生まれた子です。まだ小さかった頃、捕獲器にかかって保護され、保護団体を経て田中さんのもとへやってきました。迎えたのは、生後3ヶ月ほどの頃。いまは3歳半になります。

慎重で、少し怖がりな性格。
家では穏やかに過ごしていますが、外の世界はまだ少し緊張する場所です。コンクリートの道では震えてしまうこともありますが、森の中や自然の多い場所では、まるで別の犬のように生き生きとするのだそうです。

「野犬の子って、それぞれ個体差がすごくあるんですよ」

りんちゃんの怖がりな性格も、田中さんは無理に変えようとはしません。

「個性だと思ってね。理解するしかない」

外の世界を慎重に生きてきた証。
それもまた、この子の個性だと田中さんは考えています。

もう一頭のうら君は、2歳のときに家族になりました。

霞ヶ浦のあたりから保護された犬なので、“うら”君と名付けられました。田中さんの家に来るまでは、保護団体のもとで2年間暮らしていた子でした。譲渡会にも何度か出ていましたが、なかなか家族が見つからなかったといいます。

譲渡会では、どうしても人気の偏りがあるといいます。

小さな犬や、プードル、柴犬などのいわゆる「ブランド犬」は比較的早く新しい家族が決まります。飼いやすそうに見えることや、見た目の分かりやすさもあって、希望者が集まりやすいからです。

けれど、中型のミックス犬はそう簡単にはいきません。

「こういうサイズで、ブランド犬じゃないミックスの子は、なかなか里親が決まらないんですって」

譲渡会では何度も見送られ、気づけば2年が経っていたうら君。
保護主からは「田中さんみたいな人は珍しい」と言われたそうです。

けれど田中さんにとっては、そんなことは関係ありませんでした。

「うちは別に、犬種とか関係ないんですよ」

実は、二頭目を迎えることにも少し迷いがありました。
一頭でも犬との暮らしは大変です。それでも、もし二頭でも暮らせるなら——そんな思いがあったといいます。

「一匹でも大変なんだけど、でももしかしたら二匹ぐらい飼えるかなって思って」

奥様の洋美さんは、もともと保護活動に何か関わりたいと思っていました。

「本当はNPOのお仕事とかで何かできたらと思ったんですけど、私に何ができるのか分からなくて」

そんなときに思ったことがありました。

犬を一頭迎えれば、そのぶん保護団体の「枠」が一つ空く。
それは、また新たな犬が救われる事に繋がるかもしれない。

「犬を一匹飼うっていうことは、膝が一つ空くっていうことだから」

そう考えた田中さんは、もう一頭迎えることを決めました。

「だから、この子を選んだというよりは、どんな子でも家に来てくれればそれでご縁がある子だと思って」

特別な条件があったわけではありません。
ただ、もし縁があるなら——それでいい。

「一匹でも多く保護してあげたいなっていう思いですね」

そうして、うら君は田中家の一員になりました。

うら君は、とても甘えん坊で、そしてとても頭のいい犬だといいます。家族の様子をよく見ていて、まるで先回りするように行動することもあるそうです。

りんちゃんと性格は違いますが、2頭はとても良い関係です。
庭では“ワンプロ”をして遊び、時には並んでくつろぐ姿も見られます。


田中さんは、犬についてこう話します。

「犬ってみんな違うんですよ。みんな個性なんです」

だから、「保護犬はこう」「野犬はこう」と決めつける必要はないと言います。

「その個性を見ながら、自分に合った子を選べばいいんじゃないかなって」

野犬の血が入っていると、人に懐かないのではと思われがちです。
けれど田中さんは、それも誤解だと言います。

「外では警戒していても、家族にはものすごく人懐っこいですよ」

実際、うら君もりんちゃんも、家では甘えん坊。
家族のそばに来て体を寄せてくるのだそうです。

「それに、番犬にもなりますしね」

そう言って笑います。

田中さんにとって、この2頭は“最後の犬”になるかもしれません。

「私たちの歳も考えて、もうこれが最後かなと思っています」

犬は10年以上生きる存在です。
その時間を最後まで責任を持って共に過ごせるかどうか。

それでも、犬と暮らす毎日はかけがえのないものです。

朝起きてから夜まで、生活の中心にはいつも犬がいる。
散歩をして、食事をして、一緒に時間を過ごす。

そんな日々を、田中さんは大切にしています。

最後に、田中さんはこんな言葉を話してくれました。

「ミックス犬って、美しいんですよ」

純血種とは違う、世界に一頭だけの姿。
同じ兄弟でも、みんな少しずつ違う。

「唯一無二なんですよね」

保護犬でも、ペットショップの犬でも、犬は犬。
個性が違うだけで、かわいさは同じです。

そして、もし保護犬を迎えれば、その先でまた一頭の命が助かるかもしれません。

「丈夫で、可愛くて、頭もいい。家族にはとても懐く。
それで一頭助かるなら、すごくいいじゃないですか」

そう語る田中さんの隣で、
うら君とりんちゃんは、静かに寄り添っていました。

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